■ 三Onアイテム資料

・ここではゲームを楽しむための一環として、三國志Onlineで登場するアイテムが、現実世界ではどういうものなのかを、資料として掲載しています。
・ゲーム内ではボタン1つで簡単に採集、生産して量産されているものが、実際には非常に希少な資源だったり、採取行為が法律で厳しく規制されていたりします。
・情報は主にwikipediaを参考にしています。名称をクリックするとwikipediaの該当ページにリンクします。(リンクのないものはwikipedia以外を参考にしています)

金属  鉱石  宝石  材木  植物  生物資源  自然資源  食品

● 金属

錫(すず)
炭素族元素の1つ。常温、常圧での結晶構造は βスズ (beta-tin) 構造(正方晶)で、 その名の通り βスズ(白色スズ)と言われる金属である。
融点が低く比較的無害な金属材料として、スズ単体、または、合金の成分として古来から広く用いられてきた。
スズを含む合金としては、鉛との合金であるはんだ(最近は鉛フリーのはんだもある)、銅との合金である青銅が代表的。
スズ単体についても、適度な硬さがあり加工もしやすいため、 アルミニウムが安価に生産されるようになるまでは食器などの日用品に広く用いられてきた。
パイプオルガンのパイプもスズを主とした合金である。
近代における用途として、βスズを鋼板に被覆したブリキや、 軸受に用いられるバビットメタル(銅およびアンチモンとの合金)、 ウッド合金やガリンスタンのような一連の低融点合金などがある。
また、インジウムとスズの酸化物(ITO)は液晶の電極として用いられるほか、 熱線カットガラスとして乗用車のフロントガラスなどの表面に用いられる。
日本において、スズそのものの加工品としては奈良時代後期に茶とともに持ち込まれた可能性が高い。
今でいう茶壷、茶托などであろうと推測される。金属スズは比較的毒性が低く、酸化や腐食に強いため、主に飲食器として重宝された。
現在でも、大陸喫茶文化の流れを汲む煎茶道ではスズの器物が用いられることが多い。
日本独自のものには、神社で用いられる瓶子(へいし、御神酒徳利)、水玉、高杯などの神具がある。
いずれも京都を中心として製法が発展し、全国へ広まった。
それまでの特権階級のものから、江戸時代には町民階級にも慣れ親しまれ、酒器、中でも特に注器としてもてはやされた。 京都、大阪、鹿児島に、伝統的な錫工芸品が今も残る。

銅(どう)
金属では銀の次に導電性が高く、価格も比較的安い事から電線・ケーブルの材料としてよく使われる。
また銅イオンは殺菌作用を持つ事から、抗菌仕様の靴下や靴の中敷などによく使われている。
殺菌作用と導電性を生かした物として絨毯、マットなどに使用されている。
特に細い導線を容易に作成できる為、絨毯に織り込んで使用する。
これにより、静電気の発生しにくい絨毯としてホテルなどのロビーで使用されている。
また、オリンピックはじめ様々な大会やコンクールなどは金、銀に次ぐ3位の色としても知られている。
銅は先史時代から使われてきた金属である。
銅と錫の鉱石は混在することから、メソポタミアでは紀元前3500年頃から銅に錫が混ざった青銅で道具を作るようになった。
青銅器はエジプト、中国(殷王朝)などでも使われるようになり、世界各地で青銅器文明が花ひらいた。

青銅(せいどう)
銅Cu を主成分としスズSn を含む合金である。ブロンズ、砲金ともいう。
紀元前3000年頃、初期のメソポタミア文明であるシュメール文明で発明された。
イラン高原は、銅と錫、燃料の木材が豊富であった。
また、多くの銅鉱石は錫を同時に含むので自然に青銅が得られた。
この場合、産地によって錫などの配合比が決まっており、 また錫と同時に添加されることの多い鉛の同位体の比率が産出鉱山ごとに異なるので、分析によりその原産地を推定できる。
青銅は銅などに比べれば硬く、研磨や鋳造・圧延などの加工ができたので、斧・剣・壷などに使われた。
また、初期の大砲は材料として青銅を用いたので、砲金と呼ばれるようになったが、これは鋳鉄にとって代わられた。
さらに青銅は鉄と比べ硬さはかなり劣るものの強度では銅のほうが高いため加工性に優れているが 一方採掘可能な量が少ない(沸点と硬度はほぼ比例している、ゆえに硬くない)、また鉄よりさびにくい。

鉄(てつ)
元素記号の Fe はラテン語での名称 Ferrum に由来する。
日本語では、黒い錆を生じる事や、しろがね(銀)より輝きが劣るがくろがね(黒い金属)と呼ばれていた。
道具の材料として、人類にとって最も身近な金属元素の1つで、様々な器具、構造物に使われる。
鉄を最初に使い始めたのはヒッタイトである。 ヒッタイト以前の紀元前18世紀ごろ、すでに製鉄技術があったことが発掘された鉄によって明らかになっている。
鉄器時代以降、鉄は最も重要な金属の1つであり、産業革命以降、ますますその重要性は増した。
鉄は、炭素などの合金元素の存在により、より硬い鋼となる。

鋼(はがね)
鉄を主成分にする合金の総称で、鉄鋼(てっこう)とも呼ばれ、鋼でできた材料を鋼材(こうざい)、 板状の鋼材を鋼板(こうはん)と呼ばれる。
英語の発音である「スチール」という言い方もあるが、 「盗む」のスチール(steal)と発音が同じなので、商用の言葉にはなり難い。
一方で鋼はその頑強さからしばしばイメージで語られることがある。
英語圏ではマン・オブ・スティールはスーパーマンの通称で知られており、 名字としてはロシア語で「鋼鉄の人」を意味する独裁者ヨシフ・スターリンを指す。
鋼は、さびやすいという欠点はあるものの、炭素含有量や熱処理の仕方によって、 材料強度や耐食性、耐熱性、磁気特性、熱膨張率などを変えることが可能である。
鋼と呼ばれないものには、鋳鉄、錬鉄などがある。これは使い勝手から来る要求性能よりも作り勝手を重視しているからである。

銀(ぎん)
元素記号の Ag は、ラテン語での名称 argentum (輝くもの)に由来する。
電気伝導率および熱伝導率、また可視光線の反射率は、いずれも金属中で最大である。
光の反射率が高い事から、日本語ではしろがね(白銀: 白い金属)と呼ばれた。
銀イオンはバクテリアなどに対して強い殺菌力を示すため、現在では広く抗菌剤として使用されている。
例えば抗菌加工と表示されている製品の一部に、銀化合物を使用した加工を施しているものがある。
金とともに、中世ヨーロッパでは新大陸発見までの慢性的な不足品であって、そのため高価でもあった。
この時代の日本は東アジア随一の金、銀、銅の採掘地域であり、中国への輸出も行っていた。
これらの金属は日本の貿易品として有用だったので、銀山は鎌倉幕府以前から江戸の鎖国終了からしばらく、 明治に至っても国が直轄する場合が多かった。
中でも島根県大田市の石見銀山は有名。その後、日本の銀山は資源枯渇のため、世界の銀産出地から日本の名前は消えた。
銀は、美しい白い光沢を放つ事から、占星術や錬金術などの神秘主義哲学では月と関連づけられ、銀は男性を、金は女性を意味していた。
ある時を境に位置が逆転し、銀は月や女性原理などを象徴する物となり、一方、金は太陽や男性原理などを象徴する物となった。
また、各種競技、コンクール等で、2位の場合に送られるメダル等に使われていることから、二位という象徴的意味も持ち合わせている。

金(きん)
柔らかく、可鍛性があり、重く、光沢のある黄色(金色)をしており、展性に富み非常に薄くのばすことができる遷移金属である。
同族の銅と銀が反応性に富むこととは対照的に、イオン化傾向が極めて小さく反応性が低い。
熱水鉱床として生成され、そのまま採掘されるか、風化の結果生まれた金塊や沖積鉱床(砂金)として存在している。
金は多くの時代と地域で貴金属としての価値を認められてきた。
化合物ではなく単体で産出されるため装飾品などとして人類に利用された最古の金属である。
銀や銅と共に貨幣用金属の一つであり、貨幣(金貨)として使用され、流通してきた。
ISO通貨コードでは XAU とあらわす。また、歯科医術、エレクトロニクスなどの分野で様々な利用方法が応用されてきている。
金は非常に柔らかい物質であり、通常は銅や銀、その他の金属と鍛錬されて用いられる。
金とその他の金属の合金は、その見栄えの良さや化学的特性を利用して指輪などの装飾品として、 また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきた。
さらに貨幣、または貨幣的を代替する品物として用いられてきた。

百錬鋼(ひゃくれんごう)
極上の鋼のこと。古代中国の兵器に用いる素材として東漢に登場し、主要な兵器はすべて百錬鋼で製造されていたという。
百錬鋼兵器の品質は高く、中国の兵器史上において自慢できるものだけではなく、 世界の兵器の宝庫のなかにおいても先進的なものであったらしい。
現代でも鍛え抜かれた日本刀などは、「百錬鋼」という名が含まれるものもあるらしい。

● 鉱石

金剛砂(こんごうさ)
ざくろ石(天然のけい酸塩)の細粒がうわ薬の、様々な形に固着した砥石をいう。
荒研ぎ用や、特に、刃の欠けたときは研ぎ減りが早く修整が迅速にでき、また、丸鋸の仕上研ぎなどにも使われる。
現在でも包丁などを研ぐ際に、砥石と併用して使われたりする。

朱砂(しゅさ)
硫化水銀(II)(HgS)からなる鉱物で、一般的には辰砂(しんしゃ)と呼称される。
不透明な赤褐色の塊状、あるいは透明感のある深紅色の菱面体結晶として産出し、 錬丹術などでの水銀の精製の他に、古来より赤色(朱色)の顔料や漢方薬の原料として珍重されている。
中国の辰州(現在の湖南省近辺)で多く産出したことから、「辰砂」と呼ばれるようになった。
日本では弥生時代から産出が知られ、いわゆる魏志倭人伝の邪馬台国にも「其山 丹有」と記述されている。
古墳の内壁や石棺の彩色や壁画に使用されていた。奈良県、徳島県、大分県、熊本県などで産する。
中国医学では「朱砂」や「丹砂」等と呼び、鎮静、催眠を目的として、現在でも使用されている。
有機水銀や水に易溶な水銀化合物に比べて、辰砂のような水に難溶な化合物は毒性が低いと考えられている。
辰砂を含む代表的な処方には「朱砂安神丸」等がある。

砂鉄(さてつ)
砂鉄は、鉄や酸化鉄が粉末になったもの。色は黒で、時々褐色がかっている。
砂浜など、天然でも産出する。天然の砂鉄は普通、磁鉄鉱よりなる。
鉄分を含むため、磁石に吸い付く。古くは製鉄材料の主原料として使われていた。
現在は鉄鉱石に置き換わっているが踏鞴製鉄など日本刀を製作する上で欠かせない物として現在も使用されている。

岩塩(がんえん)
鉱物として産する塩化ナトリウム(NaCl)のことである。
海底が地殻変動のため隆起するなどして海水が陸上に閉じ込められ、 水分が蒸発して濃縮された結果、塩分が結晶化、更に地層中で圧縮されたものである。
通常無色か白色に近い淡い色をしているが、ヒマラヤで産出する濃い紫色をしたルビーソルトや、 アンデス山脈で産出するピンク色のローズソルトなども知られる。
こうした岩塩の結晶の色は、不純物によるものではなく、 地層中で長期間にわたって放射線を浴びることによって生じた格子欠陥によるものが多い。
食品や工業原料、また美術品(彫刻素材やシャンデリア材料)として用いられる。

砥石(といし)
金属や岩石などを切削、研磨するための道具。天然のものと人造のものとがある。
人造砥石は19世紀にアメリカ合衆国で製造が開始された。 均質であり入手も容易であることから、現在では広く流通している。
天然物は、刃物へのアタリが柔らかいことなどを理由に、 依然として愛好者が多く、日本では地域ブランドとして丹波青砥、日照山、中山(いずれも京都府)や天草(熊本県)などが著名。
主に、金属製の刃物の切れ味が落ちた際に、切断機能を復元するために使用される。また、用途によって種類も多くある。
人手で刃物を研ぐ砥石は長方形が多いが、動力を利用するものだと厚みのある円形で、 外周端面を使って研ぐものと円形の面を使い水平に回転させて研ぐものがある。
砥石は、これらの原料の種類、粒度(原料の粗さ)、結合度(原料を結びつける強さ)、 組織(原料の密集度)、結合材(粉末の原料を固める材料)などのファクターを選定する事により、 あらゆる金属、及び非金属を高精度に研削することができる。
砥石は後述のように人類の初期からの道具であるが、 現代では切削工具(バイト、ドリル等)では得られない加工精度を得るための工具として重用されている。

滑石(かっせき)
珪酸塩鉱物の一種、あるいはこの鉱物を主成分とする岩石の名称。
輝石、角閃石、カンラン石といったマグネシウムのケイ酸塩を主成分とする鉱物から成る岩石が熱水変成して生じる変成岩であり、 前述の鉱物を主成分とし、他の鉱物と混ざった状態で産出することが多い。
用途としては、粉末にして黒板用のチョーク、玩具、工事現場などでのマーキング用、 ベビーパウダーなど化粧品類、医薬品や上質紙の混ぜ物などがある。
ベビーパウダーをタルカムパウダーと呼ぶ事があるのは、滑石の英語名 talc に由来する。
利尿作用、消炎作用があるとされ、猪苓湯(ちょれいとう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などの漢方薬に配合される。

石膏(せっこう)
硫酸カルシウム(化学式CaSO4)を主成分とする鉱物。
硫酸カルシウム・2水和物(CaSO4・2H2O)を二水石膏、軟石膏、または単に石膏(gypsum、狭義の「石膏」)という。
半水石膏は、水と化学反応し二水石膏に変化する。
骨折時の治療用具としてのギプス、型取り用の石膏は、粉末状の半水石膏を水と反応させ、 二水石膏(単に「石膏」ともいう)として硬化させたものである。
日本薬局方では「焼石膏」として記載されている。
豆腐の凝固剤としても用いられており、中華人民共和国南部や台湾などでは「豆腐花」など、 日本では絹ごし豆腐といった柔らかい豆腐の製造に適する。
これは溶解してイオン化し、塩析効果を発揮する速度が苦汁よりも遅いため、濃厚な豆乳の全体を均質に凝固させやすいからである。
二水石膏は、加熱(160°C〜170°C)により水分を失い、半水石膏に変化する。
天然の二水石膏は、日本薬局方に医薬品名「石膏」として記載されている生薬である。
天然物であるから、純粋の硫酸カルシウム・2水和物ではなく、ケイ素、アルミニウム、鉄などの化合物が少量含まれる。
生薬としての石膏は、解熱作用や止渇作用などがあるとされる。石膏を含む漢方方剤は、竹葉石膏湯、防風通聖散、桔梗石膏など多数ある。

石灰石(せっかいせき)
鉱物である方解石・霰石、あるいは岩石である石灰岩・結晶質石灰岩(大理石)を、資源として扱うときの鉱石名または商品名。
物質名は炭酸カルシウム(CaCO3)であり、錠剤の基材、チョーク、窯業、製紙などに用いられる。
ゴムや充填剤の添加剤としても使われ、研磨作用を利用し消しゴムや練り歯磨きにも入っている。
化粧品原料、食品添加物としても使用が認められている。
中性の水にほとんど溶けない。塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を放出する。

● 宝石

水晶(すいしょう)
ゲーム内では「水晶の塊」として白、黄、紫とあるが、 水晶といえば石英が自由に成長し結晶面で囲まれた(自形)状態のものをいい、塊状のものは石英(せきえい)と言う。
水晶(石英)には、無色から白、黒、紫、ピンク、黄色、赤茶、緑などかなりの色のバリエーションがあり、 石英に混じっている不純物によっていろいろな色となる。
水晶に不純物が混じり色のついたものを色つき水晶といい、 インクルージョン(内包物または包有物)を含んだり、結晶の形が変わって見えるものを変わり水晶という。
色つき水晶は準貴石として扱われ、変わり水晶はコレクターに人気があり、 その特徴によって様々な名称が付けられている。

紅玉(こうぎょく)
ルビーのこと。
ルビーの中の1%のクロムが光エネルギーに反応し、自ら赤く発光するため、 どんな光の中でも赤い光を発することができる宝石。
ミャンマー、スリランカ、タイ、カンボジア、タンザニア、マダガスカルなどが原産地である。
なかでもミャンマーでは「ピジョン・ブラッド」(ハトの血)と呼ばれる最高級のルビーが得られる。

藍玉(らんぎょく)
アクアマリンのこと。藍玉は和名。
その語源は、「海の水」を意味するラテン語にあたり、海の色をした宝石ということである。
海に投げ入れると瞬時に溶け込んでしまうと言われるほどで、その事から古いヨーロッパの船乗り達は、 この石を海の力の宿ったお守りとして大切に持っていた。
原産地はブラジル、スリランカ、マダガスカルなどが知られている。

黄玉(おうぎょく)
トパーズのこと。黄玉は和名。
フッ素やアルミニウムを含み、様々な色を呈するが、宝石としては淡褐色のものが上質とされる。 加熱や放射線照射などで色が変わる。
原産地はブラジル、ロシア、タイ、カンボジア、ベトナム、アフリカ。そして僅かではあるが日本にも産出する。

緑玉(りょくぎょく)
エメラルドのこと。ベリル(緑柱石)の一種で、強い緑を帯びた宝石である。
和名、翠玉(すいぎょく)、緑玉(りょくぎょく)。
特にエメラルドカットと呼ばれるカットがされることが多い。
アクアマリンは同じ成分の宝石。硬度は7.5〜8。比重は2.6〜2.8。5月の誕生石である。
内部に特有の傷が無数にあり、これが天然ものの標識ともなっている。大きく傷が少ないほうが価値が高い。
明るく濃い緑色のものが最上級とされるが、近年では科学的処理をし人的手段を用いて綺麗な物に見せている物も数多く出回っている。また、中には黄緑色をした物もある。
結晶の性質上、一定方向からの衝撃に極端に弱いため、ぶつけたりしない等のケアも必要である。
また、高熱にも弱いため調理をするときは外すのが賢明である。
稀にキャッツアイ効果(シャトヤンシー効果)の表れる「エメラルド・キャッツアイ」や スター効果の表れる「スターエメラルド」が産出される事があるが、 非常に稀少でほぼコレクターズアイテムとなり良質の物になれば大変高価である。
同じベリルに属する「レッドベリル」をアメリカの宝石業界が「レッドエメラルド」と呼ぶように他国と激しい議論を重ねているが、 本来エメラルドには「緑色の」と言う意味があるのでこの名称は正しくない、と考える人もいる。
しかし、ベリルの語源であるギリシア語beryllosにも「海のような青緑の石」という意味がある。石言葉は「幸運・新たな始まり」。

翡翠(ひすい)
深緑の半透明な宝石のひとつ。 東洋(中国)、中南米(インカ文明)では古くから人気が高い宝石であり、金以上に珍重された。 古くは玉(ぎょく)と呼ばれた。
中国では、他の宝石よりも価値が高いとされ、古くから、腕輪などの装飾品や器、 精細な彫刻をほどこした置物など加工され、利用されてきた。
ニュージーランドやメソアメリカではまじないの道具としても 使われていた(メソアメリカでは腹痛を和らげる石として使われていた)。
また非常に壊れにくいことから先史時代には石器武器の材料でもあった。
ヨーロッパでは翡翠で作られた石斧が出土する。日本では古代には勾玉の材料となった。
また、日本でもヒスイが産出することが確認されたのは1938年(昭和13)のことである。 現在では翡翠は乳鉢の材料としても馴染み深い。

琥珀(こはく)
木の樹脂が地中に埋没し、長い年月により固化した有機物に起源する宝石であり、 石の内部に昆虫(ハエ、アブ、アリ、クモなど)や植物の葉などが混入しているものも珍しくない。
鉱物ではないが、硬度は鉱物にも匹敵する。色は、黄色を帯びた水あめ色のものが多い。
世界的には、カリーニングラード州、リトアニア、ポモージェ、東プロイセンなどバルト海沿岸地域が主な産地である。 日本国内では、岩手県久慈市近辺で産出される。

珊瑚(さんご)
生物に起源する宝石であり、全てのサンゴが宝石となり得るわけではない。
元来は珊瑚と呼ばれたのは宝石として使われるサンゴである。
深海に生息し、樹枝状の群体を作る。骨格は石灰質で、緻密で固い骨格を作る。
黒珊瑚とは、黒っぽい色の珊瑚というだけで、珊瑚であることに変わりはない。
しかし黒色の珊瑚は希少であるらしく、そのために高価であることが多いという。

真珠(しんじゅ)
パールとも呼ばれ、珊瑚と同じく生物に起源する宝石。生体鉱物である。
貝の体内に入った異物を核として、カルシウムの結晶(霰石)と有機質層(主にタンパク質)が交互に積層し、真珠層が形成される。
この有機質の薄層と霰石の薄層が干渉色を生み出し、真珠特有の虹色が生じる(遊色効果)。
また、有機質層の厚さや色素の含有量などによって真珠の色味が決まる。
天然では産出が稀であり、加工が容易で「月のしずく」「人魚の涙」とも呼ばれているほどの美しい光沢に富むため、 世界各地で古くから宝石として珍重されてきた。最初に養殖真珠の産業化に成功したのは日本である。
黒真珠は黒蝶貝(クロチョウガイ)から採れるものであり、産地はタヒチなどが有名。

金剛石(こんごうせき)
金剛石と書かれると知らない人は何のことか分からないが、実はダイアモンドのことである。
天然で最も硬い物質であり、工業的にも研磨や切削など多くの用途に利用されている。
ダイヤモンドの屈折率は2.42と高く、外部からダイヤモンドに入った光は内部全反射して外に出て行く。この光は
シンチレーション:チカチカとした輝き、表面反射によるもの。
ブリリアンシー:白く強いきらめき、ダイヤモンド内部に入った光が全反射して戻ったもの。
ディスパーション:虹色の輝き、ダイヤモンド内部に入った光が内部で反射を繰り返し、プリズム効果によって虹色となったもの。
の3種類の輝きとなってあらわれ、それらの相乗効果によって美しく見える。

羊脂白玉(よくしはくぎょく)
一般的には和田(ホータン)白玉と呼称される事が多い。
羊脂白玉と呼ばれる事は少ないが、羊の脂肪という意味でマトンファットジェードと呼称されることがある。
ネフライト(Nephrite)とも呼ばれるそうだが、 これは鉱物種名ではなく、密で硬い透閃石や緑閃石を指す俗称であるとされ、 wikipediaなどでは「ネフライト」は「翡翠(ヒスイ)」の項目に転送される。(実際には同義ではないらしい)
和田(ホータン)とは中国の地名であり、そこで採れる白玉なので和田(ホータン)白玉というらしい。
宝石に詳しい人に「羊脂白玉」と呼んでも、すぐにはピンとこないかもしれない。
中国を代表する宝石の1つで、和田玉の中でも羊脂玉(マトンファットジェード)は特に高価である。

● 材木

真竹(まだけ)
真竹(まだけ)とは中国原産とも日本自生とも言われる竹の一種であり、竹全般を指す呼称ではない。
開花時期は初夏だが開花は稀。120年周期で咲く説が濃厚とされる。太く長い地下茎を地面に張り巡らし、地中からタケノコを生やす。
日本へは古くから持ち込まれ栽培されている。高さは20mにもなり節を持ち、節からは枝が2本伸びる。
タケノコは暗紫褐色の斑があり、無毛。別名を苦竹というようにエグみがあり、あく抜きが必要だが美味とされる。
日本ではマダケは昔から歌に詠まれ、稈は肉が厚く弾力性があり、曲げや圧力に対する抵抗性が強いことから、 弓、定規、籠、扇子などの細工物・工芸品などに利用され、また昔は釣り竿や竹槍の材料とされたが、通常は食用にしない。
マダケの稈鞘(タケノカワ)は無毛で柔軟性に富む等の性質から食品包装として利用される。
エジソンの白熱電球の材料ともなった。また竹林は地下茎が地面を広く覆うので地震、崖崩れに非常に強い。1日に1m伸びるともいわれる。

黄柏(おうばく)
一般的にはキハダと呼称される植物である。
アジア東北部の山地に自生しており、日本全土でもみることができる。
樹皮をコルク質から剥ぎ取り、コルク質・外樹皮を取り除いて乾燥させると生薬の黄柏となる。
黄柏にはベルベリンを始めとする薬用成分が含まれ、強い抗菌作用を持つといわれる。
主に健胃整腸剤として用いられ、陀羅尼助、百草などの薬に配合されている。
また強い苦味のため、眠気覚ましとしても用いられたといわれている、 また黄連解毒湯、加味解毒湯などの漢方方剤に含まれる。日本薬局方においては、本種と同属植物を黄柏の基原植物としている。
キハダは黄檗色(きはだいろ)ともよばれる鮮やかな黄色の染料で、黄色に染め上げる以外に赤や緑色の下染めにも利用される。
なかでも、紅花を用いた染物の下染めに用いられるのが代表的で、紅花特有の鮮紅色を一層引き立てるのに役立っている。
なお、キハダは珍しい塩基性の染料で、酸性でないとうまく染め上がらない。
このため、キハダで下染めをした後は洗浄を十分にする必要がある。
キハダの心材も黄色がかっており、木目がはっきりしているため、家具材などに使用される。
ただし軽量で、軟らかいため、あまりにも強い荷重がかかる場所には向いていない。
一部で桑の代用材として使用される場合がある。その場合には、桑と区別するために「女桑」と表記される。

樫(かし)
常緑性であり、葉には表面につやがあり、鋸歯(葉の輪郭のギザギザ)を持つものが多い。
アカガシ亜属は日本から台湾・中国南部・ヒマラヤにかけての温帯南部の湿潤地域に分布する。
漢字で木偏に堅と書くことからも判るように材質は非常に堅い。また粘りがあり強度も高く耐久性に優れている。
その特性から道具類、建築用材などに使われる。ただし、加工がしにくい、乾燥しにくいといった難点がある。
民家の垣根に植樹される主要な樹木の一つでもある。常緑樹であるために防風林としての機能も果たした。
また樫の生葉・生木は他の樹木と比較した場合に燃え難いこともあり、隣家火災の際には延焼を防止する目的も持ち合わせていた。

樺(かば)
樺といっても色々ある。「カバノキ属」とはカバノキ科カバノキ属に属する木の総称であり。世界に約40種、日本に約10種がある(分類の仕方によって数は一定しない)。
落葉広葉樹で、北半球の亜寒帯から温帯にかけて広く分布しする。高原の木として知られるシラカバや亜高山帯のダケカンバが代表的である。
日本ではヤマザクラ類の樹皮を用いて作られる工芸品を樺細工(かばざいく)といい、 独特の技法によってヤマザクラの樹皮特有の光沢を生かした、渋くて奥深な色合いが、 名実ともに伝統的工芸品として広く愛用されているらしい。
しかし「樺」の字から白樺を連想される事が多いが、 使っている材料はヤマザクラ及びカスミザクラの種類の樹皮だけであり、 「カバ」とは、もともとすべての木の樹皮を意味する言葉であったと解釈されている。

桃(もも)
桃といえば木材よりも、食用として人気のある果実が有名である。樹皮の煎汁は染料として用いられる。
中国において桃は仙木・仙果(神仙に力を与える樹木・果実の意)と呼ばれ、 邪気を祓い不老長寿を与える植物として親しまれている。
桃で作られた弓矢を射ることは悪鬼除けの、桃の枝を畑に挿すことは虫除けのまじないとなる。
桃の実は長寿を示す吉祥図案であり、祝い事の際には桃の実をかたどった練り餡入りの饅頭菓子・壽桃(ショウタオ)を食べる習慣がある。
壽桃は日本でも桃饅頭(ももまんじゅう)の名で知られており、中華料理店で食べることができる。

楮(こうぞ)
和紙の原料としても使われている木材。
「紙麻(かみそ)」と言う語の音便より「こうぞ(かうぞ)」という語が生まれたとする説も存在するほど、 古くから和紙材料として知られており、今日でも和紙の主要原料の楮としている。
楮の皮の繊維は、麻に次いで長く繊維が絡み合う性質が強く、その紙は粘りが強く揉んでも丈夫な紙となる。
古くは、檀紙は真弓紙とされているが、平安後期以後の檀紙はダンシと読まれ、楮紙とされている。
楮の皮の繊維を蒸して水にさらし、細かく割いて作った糸を木綿(ゆう)と言う。同じ字の木綿(もめん。ワタの繊維)とは別のものである。 神道の祭事に用いられるが、後に紙で作られた紙垂も用いられるようになった。

檀(まゆみ)
日本と中国の林に自生する。秋に果実と種子、紅葉を楽しむ庭木として親しまれ、盆栽に仕立てられることもある。
材質が強いうえによくしなる為、古来より弓の材料として知られ、名前の由来になった。この木で作られた弓のことや、単なる弓の美称も真弓という。
和紙の材料にもなったが、楮にとって代わられた。現在では印鑑や櫛の材料になっている。新芽は山菜として利用される。天麩羅やおひたしなどに向く。
なお、種子に含まれる脂肪油には薬理作用の激しい成分が含まれており、少量でも吐き気や下痢、 大量に摂取すれば筋肉の麻痺を引き起こすため、種子や種は食べてはならない。

藤(ふじ)
フジ属は、日本、北アメリカ、東アジアに自生し、日本固有種としてはフジ(ノダフジ)とヤマフジの2種がある。
このほか、中国でシナフジ、欧米でアメリカフジなども栽培されている。
食用としては、若芽をゆでて和え物や炒め物、花を湯がいて三杯酢や天ぷらとして。 種子はウィスタリン (wistarin) を含有し有毒であるが、少量を薬用に用いることもある。
蔓はとても丈夫で、藤の蔓で作られたつり橋があるほどである。 現在では家具(いすや籠など)、藤布(繊維から)、藤紙(茎皮の繊維から)などでも用いられる。

桂枝(けいし)
シナモンの若い枝のことを桂枝と言う。
熱帯地方ならほぼどこでも成育するので、栽培もされている。 葉は大きく光沢があり葉脈がはっきりしていて鑑賞価値がある。 このため観葉植物として栽培されることがある。
シナモンの一種のシナニッケイ(トンキンニッケイとも、C. cassia)の樹皮は桂皮(けいひ)と呼ばれる生薬であり、日本薬局方にも収録されている。
これは、体を温める作用、発汗・発散作用、健胃作用があり、多数の方剤に配合される。
若い枝の桂枝(けいし)も桂皮と同様に作用があるが、こちらは日本薬局方には収録されていない。
原産地は中国南部からベトナムのあたりにかけてと推測されている。
世界最古のスパイスの一つといわれ、紀元前4000年ごろからエジプトでミイラの防腐剤として使われだした。
また、紀元前6世紀頃に書かれた旧約聖書の「エゼキエル書」や古代ギリシアの詩人サッポーの書いた詩にも、 シナモンが使われていたことを示す記述がある。
中国では後漢時代(25年〜220年)に書かれた薬学書「神農本草経」に 初めて記載されている。
日本には8世紀前半に伝来しており、正倉院の御物の中にもシナモンが残されている。
しかし、樹木として日本に入ってきたのは江戸時代、亨保年間のことであった。
過剰摂取に対する注意が出されている。

杜仲(とちゅう)
中国原産の落葉高木。トチュウ目トチュウ科(APG植物分類体系ではガリア目トチュウ科)を構成する唯一の種である。
雌雄異株で、葉はニレやケヤキに似た楕円形、花は緑色がかかった白色で、実は翼果。20年程度で樹高20m程に成長する。
化石が中央ヨーロッパ及び北米で見つかっており、およそ6千万年前は多くの地域で繁殖していたと考えられているが、 現在では中国以外では確認されていない。
樹皮は漢方薬の原料として使われ、若葉はお茶として利用される。 トチュウの樹皮や枝を折ったり葉をちぎると、白色乳液の滲出がみられる。
この乳液は、グッタペルカと呼ばれ、天然ゴムとして利用される。 杜仲は寒冷地でも育つ天然ゴムの産出木として知られる。
(尚、本来グッタペルカは、アカテツ科のグッタペルカノキ(Palaquium属gutta)から取れる乳液であるが、 それと似ているため同じ名前で呼ばれている。)
トチュウの樹皮は「杜仲」という生薬名があり、医薬品として扱われる。 これは腰痛、足腰の倦怠感解消、頻尿、肝機能・腎機能の強化、高血圧に効果があるとされる。
葉を煎じた杜仲茶は、血圧の降下や肝機能の機能向上に効果があるとされる(なお、葉は効能を謳わない限り食品扱い)。

黒檀(こくたん)
原産地はインド南部からスリランカで、ほかの熱帯地方にも植樹されているが、あまり生育はよくない。
樹高25m、幹の直径1m以上になるが、生育がきわめて遅い。幹は平滑で黒褐色である。葉は長さ6〜15cmの長円形、平滑でやや薄いが革質で光沢がある。
花は雌雄同株で、雄花は数個から十数個まとまり、雌花は単生する。果実は直径2chくらいで、かきの実を小さくしたような感じである。
材質は緻密で心材の部分が黒く、細工用の木材として、家具や仏壇、建材、楽器などに使用される。
特にピアノの鍵盤やチェスの駒などに用いられていたが、乱伐の上生育が悪いため、現在ではかなり希少品になっている。

白蝋杆(はくろうかん)
中国国内でしか採れない柳の一種。非常に弾力性があり、強く振り下ろす動作のときにとてもよくしなる。
現在でも三節棍や槍、トンファーなど中国武術に使われる武器の素材として使用されている。

楊梅(ようばい)
ヤマモモのことであり、和名の由来は山に生えモモの様な果実をつけることから。
別名として楊梅(ようばい)、山桜桃、火実などがあり、古代から和歌などにも詠まれる。
名前にモモがつくがモモはバラ科であり、ヤマモモとモモは全くの別植物である。
中国大陸や日本を原産とし、暖地に生育し、暑さには強い。日本では関東以南の低地や山地に自生する。
果実は甘酸っぱく、生で食べる他、ジャムや果実酒に加工される。
野生種以外に、小粒で酸味の強い瑞光や大玉で酸味の弱い森口や秀光、秀峰などの栽培品種がある。
農作物として栽培されている。高知県の県の花、徳島県の県の木、知多市、西都市、下松市の市の木に指定されている。
樹皮は楊梅皮(ようばいひ)という生薬で、タンニンに富むので止瀉作用がある。
消炎作用もあるので筋肉痛や腰痛用の膏薬に配合されることもある。
山野に植樹されることがあったが、現在では、むしろ街路樹として公園や街路にも植えられる。
殖やし方は接木のほか取り木がある。雌雄異株のため、結実には雄木が必要である。

桑(くわ)
クワ科クワ属の総称。カイコの餌として古来重要な作物であり、また果樹としても利用される。
落葉性の高木で、大きいものは15mに達するが、普段見かけるのは数m程度のものが多い。
樹皮は灰色を帯びる。葉は薄く、つやのある黄緑色で、縁にはあらい鋸歯がある。
大きい木では、葉の形はハート形に近い楕円形だが、若い木では、葉にあらい切れ込みが入る場合がある。
雌雄異株だが、同株のものがある。春に開花する。雄花は茎の先端から房状に垂れ下がり、雌花は枝の基部の方につく。
果実は初夏に熟す。その果実は甘酸っぱく、美味であり、 高い抗酸化作用で知られる色素・アントシアニンをはじめとする、ポリフェノールを多く含有する。
キイチゴの実を細長くしたような姿で、赤黒くなる。 蛾の幼虫が好み、その体毛が抜け落ちて付着するので食する際には十分な水洗いを行う必要がある。
ログワの根皮は桑白皮(そうはくひ)という生薬である。(日本薬局方による)
果実は桑の実、マルベリーと呼ばれ、地方によっては桑酒として果実酒の原料となる。
また、非常食として桑の実を乾燥させた粉末を食べたり、水に晒した成熟前の実をご飯に炊き込む事も行われてきた。
また、葉を茶の代用品とする「桑茶」が飲まれていた地域もあり、現在も市販されている。
地図記号にもなったほど、日本で桑畑は良くある風景であった。
しかし、現在、養蚕業が盛んだった地域では、生産者の高齢化、後継者難、生糸産業全般の衰退の中で、放置された桑畑も多く残る。 ちなみに蚕が食べるのはヤマグワである。
クワの木質はかなり硬く、磨くと深い黄色を呈して美しいので、しばしば工芸用に使われる。しかし、銘木として使われる良材は極めて少ない。

● 植物

麻(あさ)
アサ科属で一年生の草本。麻繊維が他の植物からも採れるため大麻(たいま)または大麻草(たいまそう)とも呼ばれる。
この植物から採れる麻薬を特に大麻(マリファナ)と呼ぶ。
一般的に麻は覚醒剤やコカインなどと同種の「麻薬」としての悪評のみが一人歩きしてしまった。
しかし実際には食用、薬用、繊維、製紙などの素材として用いられる有用な植物である。
衣類・履き物・カバン・装身具・袋類・縄・容器・調度品など、様々な身の回り品が大麻から得た植物繊維で製造されている。
麻織物で作られた衣類は通気性に優れているので、日本を含め、暑い気候の地域で多く使用されている。
綿・絹・レーヨンなどの布と比較して、大麻の布には独特のざらざらした触感や起伏があるため、 その風合いを活かした夏服が販売されている。
大麻の繊維で作った縄は、木綿の縄と比べて伸びにくいため、荷重をかけた状態でしっかり固定する時に優先的に用いられる。
伸びにくい特性を生かして弓の弦に用いられる。また神聖な繊維とされ神社の鈴縄、注連縄や神事に使われる。 横綱の注連縄にも使われている。
繊維を取った後の余った茎(苧殻、おがら)は、かつては懐炉用の灰の原料として日本国内で広く用いられ、 お盆の際に迎え火・送り火を焚くのに用いられる。

綿花(めんか)
ワタのことで、ワタの種子から取れる繊維を木綿という。
ワタとはアオイ科ワタ属の多年草の総称で、木綿は種子の周りに付いている。
繊維としては伸びにくく丈夫であり、吸湿性があって肌触りもよい。
このため、現代では下着などによく使われるが、縮みやすいという欠点もある。主成分はセルロース。
単に棉・綿(めん)とも言う。摘み取った状態までのものが綿、種子を取り除いた後の状態のものが棉だが、区別しないことも多い。
ただし、「綿」と書いて「わた」と読むのは、本来は塊状の繊維全般を指す語である。
布団や座布団の中身を繊維の種類を問わず「綿(わた)」と呼ぶが、これはその本来の用法である。
古くは、中でも真綿(絹の原料)を意味することが多かった。
原産地はインドとアフリカといわれ、紀元前2000年にはインドで既に栽培され、繊維として使われていたことが分かっている。
紀元前には既に西アジア、ヨーロッパに伝わっていたが、ヨーロッパではあまり多量には生産されなかった。 南アメリカでも紀元前に綿が使用されていた。
中国への伝来は晩唐とも北宋とも言われている。
朝鮮半島へは1364年に文益漸が国禁を犯して元から伝えたという記録が残されている。

甘草(かんぞう)
マメ科の多年草で、多くの種類がある。根を乾燥させたもの、そのエキスまたは粉末を甘味料として用いる。
生薬として、漢方では緩和作用、止渇作用があるとされている。
各種の生薬を緩和・調和する目的で多数の漢方方剤に配合されている。
このため、漢方ではもっとも基本的な薬草の一つと考えられており、「国老」とも称された。
安中散、四君子湯、十全大補湯、人参湯など多数の漢方方剤に使われる。
また、甘草だけで甘草湯という処方もあり(漢方で生薬を単独で使うのは稀)、喉の痛みや、咳を鎮める効果があるとされる。
グリチルリチンは肝機能障害、アレルギーに有効であるとされ内服薬或は輸液に製剤化されている。
グリチルリチンを加水分解して得たグリチルレチンはその消炎作用から目薬としても用いられている。
グリチルリチンやその他の甘草から得られる物質は消炎作用や美白の効果を持ち、医薬のみならず、 化粧品や医薬部外品の原料としても重要である。
なお、日本薬局方においては、学名Glycyrrhiza uralensisまたはG. glabraの甘草が基原植物とされる。

菜の花(なのはな)
アブラナのこと。菜の花はアブラナ属植物全般の花の呼称として使われることもある。
油料系植物としてのアブラナ・ナタネは、日本在来種Brassica rapa var. nippo-oleifera と セイヨウアブラナ(西洋油菜)B. napusがある。
近年、日本で栽培されているのは後者が多い。ナバナ(菜花)として野菜としても栽培される。
種子の含油量40%、比重0.9、搾り取った菜種油は食用油、灯火、潤滑油の原料となる。
精製したものは「白絞油(しらしめゆ)」または「水晶油」。
近年の菜種油は、成分育種が進んでおり、エルカ酸(エルシン酸とも)を含まない無エルシン酸品種が主流である。
無エルシン酸品種は、カナダで最初に育種された。

小麦(こむぎ)
イネ科 コムギ属に属する一年草の植物。
広義にはT. compactum (クラブコムギ) や T. durum (デュラムコムギ、マカロニコムギ) など コムギ属 (Triticum) 植物全般を指す。
世界三大穀物の一つ。古くから栽培され、世界で最も生産量の多い穀物である。年間生産量は6億トン近くに及ぶ。
収穫された種子は粉にして小麦粉として使われる。小麦粉はパンやうどん、中華麺、菓子、パスタなどの原料となる。
粒の硬さにより、生成される小麦粉の種類、用途が異なる。一部のビールはコムギの麦芽から作られる。
ウイスキーや工業用アルコールの原料にもなる。
品質が劣るものや製粉の際に出るふすまは家畜の飼料となる。
中央アジアのコーカサス地方から西アジアのイラン周辺が原産地と考えられている。1粒系コムギの栽培は1万5千年頃に始まった。
その後1粒系コムギはクサビコムギAegilops sguarosaと交雑し2粒コムギになり、 さらに紀元前5500年頃に2粒系コムギは野生種のタルホコムギA. squarrosaと交雑し、 普通コムギT. aestivumが生まれたといわれる。
普通コムギの栽培はメソポタミア地方で始まり、紀元前3000年にはヨーロッパやアフリカに伝えられた。
聖書の中にも頻繁に「麦」や「小麦」が登場し、重要な作物であったことがわかる。
聖書の中で小麦が最初に登場するのは、最初の書である創世記(30章14節)である。
中国への小麦の伝来も文献などからシルクロードが開かれた紀元前1世紀頃(前漢)時代と考えるのが一般的であり、 中国経由で伝来されたと考えられている日本でも約2000年前の遺跡から小麦が出土しており、 伝わったのはそれから遠くない弥生時代であると考えられている。

大豆(だいず)
マメ科の一年草、また、その種子のこと。食用となる。
農作物として世界中で広く栽培されている。日本には縄文時代の出土例や、古事記にも大豆の記録が記載されている。
ダイズの種子には苦み成分であるサポニンが多く含まれており、人類の主食にまではなっていないが、植物の中では唯一、
肉に匹敵するだけのタンパク質を含有することから、近年の世界的な健康志向の中で、「ミラクルフード」として脚光を集めている。
「畑の牛肉」の異名もある。また、日本料理やその調味料の原材料として中心的役割を果たしている。
説が各種あり定かではないが、原産地は中国東北部からシベリアとの説が有力で、日本にも自生しているツルマメが原種と考えられている。
栽培の歴史も諸説あるが、約4000年前に中国で野生種大豆の栽培が始められたと考えられている。
日本では縄文時代の遺跡から炭化物や土器内部の植物圧痕として確認された例があり、その頃の伝来と考えられている。

生姜(しょうが)
ショウガ科の多年草であり、食材・生薬として利用される。
ショウガの根を食べるものとして、酢、塩、砂糖で調味した生姜の甘酢漬けや梅酢で漬けた紅生姜がある。 甘酢漬けは寿司と共に出される(符牒ではガリ)。
紅しょうがは、細かく刻んで焼きそば、たこ焼きなどに加えたり、 ちらし寿司、牛丼などに添えられるられる他、関西の一部地域では薄く切って天ぷらの定番食材として用いられている。
ショウガの根茎は漢方薬として生姜(しょうきょう)と呼ばれ、発散作用、健胃作用、鎮吐作用があるとされる。
発散作用は主に発汗により寒気を伴う風邪の初期症状の治療に使われ、 健胃止嘔作用は胃腸の冷えなどによる胃腸機能低下などに使われることが多い。
辛温の性質を持つため、中医学で言われる熱証には用いない。
大棗との組み合わせで他の生薬の副作用をやわらげる働きがあるとされ、多数の方剤に配合されている。

アカヤジオウ(地黄)
ゴマノハグサ科の植物の一種。学名Rehmannia glutinosa。中国原産で地下茎は太く赤褐色で、横にはう。
葉は長楕円形で、根際から出る。初夏、15-30cmの茎を出し、淡紅紫色の大きい花を数個開く。
アカヤジオウ(近縁植物を含むことあり)の根は地黄(じおう)という生薬である。
初出典は神農本草経。主成分はイリドイド配糖体カタルポール。
地黄は根を陰干ししてできる生地黄(しょうじおう)、生地黄を天日干ししてできる乾地黄(かんじおう)と呼ばれるものと、 生地黄を酒と共に蒸してできる熟地黄(じゅくじおう)と呼ばれるものがある。
一般的に地黄と呼ばれるものは乾地黄を指すことが多い。五味は甘、苦。甘味は生地黄、乾地黄、熟地黄の順に強くなる。
性は寒。但し熟地黄は寒性よりも酒の効果により温性に近い。
地黄は単体として使われることよりも調剤生薬として使われる事が多い。
神農本草経では、「乾地黄味甘寒主折跌絶筋傷中逐血痺填骨髓長肌肉作湯除寒熱積聚除痺生者尤良久服軽身不老」とあり、
内服薬として利用した場合、補血・強壮・止血の作用が期待できる。外用では腫れものの熱をとり、肉芽形成作用がある。
地黄を使った漢方として有名なものは、六味地黄丸、八味地黄丸、四物湯、炙甘草湯などがある。
明代の医学書「万病回春」によると三白(ネギ、ニラ、ダイコン)と併用を禁忌としている。

薄荷(はっか)
ミントのことで、シソ科ハッカ属の多年草の総称。和名はハッカ(薄荷)。
ハーブとして料理や菓子、薬用酒などの材料となるほか、 精油(エッセンシャルオイル)は香料として食品や歯磨き粉に添加されたり、アロマテラピーに用いられる。
また、成分として含まれるメントールを抽出する。メントールはミントの爽快味、冷涼感の主体となる成分である。
モロッコでは緑茶と生のミントを混ぜたお茶を飲む。
漢方薬(生薬名:薄荷葉(はっかよう))としても清涼、解熱、発汗、健胃などの目的で用いられる。

麻黄(まおう)
常緑低木でユーラシア(中国からヨーロッパの地中海沿岸)、北アフリカ、南北アメリカ大陸の乾燥地に1属50種ほどが分布する。学名Ephedra。
特に中国北部などの砂漠地帯に分布するフタマタマオウ(Ephedra distachya:双穂麻黄)や シナマオウ(E. sinica:草麻黄、これらは同種ともされる)などの地下茎が、 古くから生薬の麻黄として用いられた(日本薬局方においては、E. sinica、E. intermedia、E. equisetinaを麻黄の基原植物としている)。
これには気管支喘息に効果のある成分エフェドリンが含まれる。 1885年、長井長義によってこれに含まれる天然物エフェドリンが発見されたが、 当時はその効果は知られず(当時漢方医学が無視されていたためか)、 気管支喘息治療に有効であることが明らかにされたのはずっとのち、1924年のことであった。

杏仁(きょうにん・あんにん)
アンズの種子の中にある仁(さね)を取り出したものである。
漢方薬の薬味として使うときは「きょうにん」、菓子などに使うときは「あんにん」と発音する。
苦みの強い苦杏仁(くきょうにん)と、甘みのある甜杏仁(てんきょうにん)があり、前者は薬用に、 後者は杏仁豆腐(あんにんどうふ)などのお菓子の材料として用いられている。
ここでは生薬としての杏仁について説明する。 なお、「あんにん」という読み方は、南京や上海あたりのもので、 明治以降に盛んになった支那料理(現・中国料理)で、ポピュラーになったものである。
杏仁は、三国時代(3世紀)頃に編纂されたもっとも古い漢方薬書である傷寒論にあり、 麻黄湯、大青竜湯などの重要な処方に配剤されている大切な薬味である。
漢方では、麻黄と組んで用いられ、鎮咳剤・去痰剤として多く用いられている。
古くから「毒のある薬味」とされており、分量を慎重に決めるようにといわれていた。
現在では、アミグダリンがわずかに含まれていることがわかっている。

棗(なつめ)
クロウメモドキ科の落葉高木である。 果実は乾燥させ(乾しなつめ)たり、菓子材料として食用にされ、また漢方薬としても用いられる。
英語ではJujubeまたはChinese date(中国のナツメヤシに似たものの意味)という。
中国北部原産で非常に古くから栽培されてきた。庭木や街路樹としても用いる。花は淡緑色で小さく目立たない。
果実は核果で長さ2cmほどの卵型、熟すと赤黒くなり次第に乾燥してしわができる(名の通りナツメヤシの果実に似る)。
核には2個の種子を含む。同属は多く熱帯から亜熱帯に分布し、ナツメ以外にも食用にされるものはあるが、ナツメが最も寒さに強い。
サネブトナツメまたはその近縁植物の実を乾燥したものは大棗(たいそう)、種子は酸棗仁(さんそうにん)と称する生薬である。
(日本薬局方においては、大棗が収録され、ナツメの実とされている。)
大棗には強壮作用・鎮静作用が有るとされる。甘味があり、補性作用・降性作用がある。
生姜(しょうきょう)との組み合わせで、副作用の緩和などを目的に多数の漢方方剤に配合されている。
酸棗仁には鎮静作用・催眠作用が有るとされる。酸味があり、補性作用・降性作用がある。酸棗仁湯、葛根湯などに配合されている。

きのこ
菌類のうちで比較的大型の子実体を形成するもの、あるいはその子実体そのものをいう。
ここでいう「大型」に明確な基準があるわけではないが、肉眼で存在がはっきり確認できるくらいの大きさのものをキノコという場合が多い。
いずれにせよ「キノコ」という語は学術用語というよりは日常語であって、あまり厳格な定義を求めるべきものではない。
そのため「キノコ」と片仮名書きするより「きのこ」と平仮名書きする方がふさわしいとする意見も専門家の間では根強い。
食用としての歴史は古く、古代ローマ時代から色々なキノコ料理があった。
また、縄文時代の日本では毒キノコに当たる者が多かったためか、 毒キノコを模した土製品が出土しており、当時から食育の対象であったと考えられている。 世界で一年間に800万トン食べられている。

大蒜(にんにく)
ネギ科(クロンキスト体系以前の分類法ではユリ科)の多年草で、球根(鱗茎)を香辛料として用いる。
原産地は中央アジアと推定されるが、すでに紀元前3200年頃には古代エジプトなどで栽培・利用されていた。 日本には中国を経て8世紀頃には伝わっていたと見られる。
中国料理では、球根のみならず葉や茎(いわゆる「ニンニクの芽」)も香味野菜として利用される。
その他韓国料理、イタリア料理、フランス料理など、さまざまな料理に用いられる。
香味野菜の代名詞的存在といえ、料理に食欲をそそる香味を付与する。 また、畜肉のくせをマスキングする効果も重宝されている。
中華料理・イタリア料理などでは、油が冷たいうちにニンニクのみじん切りを入れて弱火で炒めるのがコツである。 火が強すぎるとすぐに焦げてしまう。

黄蓮(おうれん)
中国産の植物で、オウレン属の根茎を「黄蓮」といい、漢方薬として利用される。
日本では日本産の別種をオウレン(別名:キクバオウレン)と呼び、「黄連」「黄蓮」と表記することもある。
こちらはキンポウゲ科の常緑多年草。生薬名を黄蓮(おうれん)といい使用部位は根茎で、やや太く横に伸び、多くの細根を出す。
主成分はベルベリン。消炎性苦味健胃剤・整腸剤で消化不良、嘔吐、腹痛、下剤に用いられる。

くず(葛根)
マメ科のつる性の多年草。秋の七草の一つ。名前は葛の文字を当てる。(「葛」で表記する場合もある)
クズの根を干したものを生薬名葛根(かっこん)と呼ぶ。日本薬局方に収録されている生薬である。
発汗作用・鎮痛作用があるとされ、漢方方剤の葛根湯、参蘇飲(じんそいん)などの原料になる。
これを題材にした落語に『葛根湯医者』がある。
クズの蔓は長いことから、切り取った蔓部が乾燥して固くなる前に編むことで、籠(かご)などの生活用品を作ることができる。
食品の葛粉(くずこ)はクズの根を晒して作る。葛切りや葛餅などの原料となる。
貝原益軒の菜譜や大蔵永常の製葛録に記されている通り、もともとは救荒食糧として認知されていた。
葛粉は良質の澱粉であり、効率よく栄養を摂取するには最適の食材である。
室町時代、とある山中で、猪が葛根をしきりに掘り出そうとしているのを見た人が「食べ物ではないか」と思いついたのが、 食糧として認知された始まりであるという伝説がある。
北海道〜九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布している。

山椒(さんしょう)
ミカン科サンショウ属の落葉低木。別名、ハジカミ、英名Japanese pepper。
ハジカミはショウガの別名でもあり、その区別では「なりはじかみ」と呼ばれた。
若葉は食材として木の芽の名称がある。アゲハチョウ科のチョウの幼虫の食草でもある。
古くから香辛料として使われており、薬用にも使われる。
縄文時代の遺跡から出土した土器からサンショウの果実が発見されたというエピソードもある。
朝鮮ではキムチ(の原形)にトウガラシ渡来前から使われていたという。
果皮は薬としても用いられる。漢方で「花椒」は蜀椒とも呼ばれ健胃、鎮痛、駆虫作用があるとされ、大建中湯、烏梅丸などに使われる。
日本薬局方では本種および同属植物の成熟した果皮で種子をできるだけ除いたものを生薬・山椒(サンショウ)としている。
日本薬局方に収載されている苦味チンキや、正月に飲む縁起物の薬用酒の屠蘇の材料でもある。
果実の主な辛味成分はサンショオールとサンショアミド。他にゲラニオールなどの芳香精油、ジペンテン、シトラールなどを含んでいる。

延命草(えんめいそう)
別名はヒキオコシ。
エンメイソウは、北海道から四国、九州に分布するシソ科の多年草で、 葉の部分に有効成分が多く含まれ、ジテルぺノイドのエンメイン、イソドカルピン、ノドシン、オリニドンなどが含まれている。
エンメイン、オリニドンには抗菌作用があり、日本では古くから苦味健胃薬、消化不良、食欲不振、腹痛などに用いられてきた。
苦み成分はアルカリ性で容易に分解されるため、制酸性の炭酸ナトリウム(重曹)を含有した胃腸薬との併用は避けたほうがよいという。

枸杞(くこ)
中国原産のナス科の落葉低木。食用や薬用に利用される。 日本や朝鮮半島、台湾などにも移入され、分布を広げている外来種でもある。
果実は酒に漬けこんでクコ酒にする他、生食やドライフルーツでも利用される。また、柔らかい若葉も食用にされる。
クコの果実、根皮、葉は、それぞれ枸杞子(くこし)、地骨皮(じこっぴ)、枸杞葉(くこよう)という生薬である。
ナガバクコ(学名Lycium barbarum)も同様に生薬にされる。
月経促進や人工中絶薬の作用をする成分(ベタイン)が含有されている為、 「妊婦あるいは授乳中の摂取は避けたほうがよい」との情報がある。
ワルファリンとの相互作用が報告されている。

延胡索(えんごさく)
生薬の一種。この生薬はケマンソウ科の植物で学名Corydalis turtschaninoviiまたはその他同属植物の塊茎のことである。産地は中国。
日本薬局方に収録されており、鎮痙、鎮痛作用などがあり、安中散、牛膝散などの漢方方剤に配合される。
身近なところでは、大正中薬胃腸薬、太田漢方胃腸薬などにも配合されている。

● 生物資源

蜂蜜(はちみつ)
ミツバチが花から集めた蜜を主原料に作り出し、巣の中に貯蔵する天然の甘味料である。
もっとも日常的に親しまれる利用法は食用である。
パンやホットケーキに塗って食べるほかリコッタなどの軽いチーズあるいはヨーグルトなどの乳製品に添えることがある。
コーヒーや紅茶等の飲み物に砂糖の替わりに甘味料として用いる。
蜂蜜の主成分である果糖は低温では甘味を感じやすいが、高温では感じにくくなる。
暖かい飲み物に蜂蜜を使う場合は、量が多くなりがちなので注意が必要である。
照焼き、煮物などで甘味とともに色ツヤを良くするためにも使われる。そのほか、保存性の高さを利用した蜂蜜漬けなどがある。
殺菌、消炎作用があり、創傷の際の消毒に使える他、医薬品として口内炎の治療などに使われる。日本薬局方に医薬品として記載されている。
蜂蜜は全世界の割合で見ると中国産が多い。また蜂蜜は花の種類によって味、色、香り、成分が大きく異なる。
新婚旅行を意味する「ハネムーン」(honey moon)の語源は新婚後1ヶ月間、 花婿にハチミツ酒を飲ませ精力をつけさせるという古代ゲルマン人の習慣からきているという説がある。
三國志では袁術の好物として知られ、袁術は最期に蜂蜜が無いのに怒り、血を吐いて死んだといわれている。

蚕(かいこ)
正式和名はカイコガで、カイコはこの幼虫の名称だが、一般的にはこの種全般をも指す。
クワ(桑)を食餌とし、絹を産生して蛹の繭を作る。
カイコは家蚕(かさん)とも呼ばれ、家畜化された昆虫で、野生には生息しない。
中華人民共和国北部で発生したとされ、養蚕は少なくとも5000年の歴史を持つ。
カイコの祖先は東アジアに生息するクワコ (Bombyx mandarina) であると考えられている。
カイコとクワコは別種とされるが、これらの雑種は生殖能力をもつ。
繭は一本の糸からできている。絹を取るには、繭を丸ごと茹で、ほぐれてきた糸をより合わせる。
茹でる前に羽化してしまった繭はタンパク質分解酵素の働きで絹の繊維が短く切断されているため紡績には向かず、真綿(絹綿)にする。
カイコは人による管理なしでは生育することができない。
体が白く、敵に見つかりやすいこと以上に、腹部のイボ足の吸盤が退化して木に登ることもできず、 また、繭を作る際も人工的な枠に入れてやらないとうまく繭を作れない。
試みにカイコを野外の桑にとまらせると、ほぼ一昼夜のうちに捕食されるか地面に落ち全滅する。

ヤママユ
チョウ目・ヤママユガ科に分類されるガの一種である。 ヤママユガ(山繭蛾)、テンサン(天蚕)ともいう。
日本在来の代表的な野蚕で、北海道から九州にかけて分布し、全国の雑木林に生息している。
ヤママユガ科のガたちは、口が完全に退化していて、成虫は何もたべることはない。
前翅長は70〜85mmと翅は厚く大きい。4枚の翅には、それぞれ1つずつ大きな黄茶色で目玉状の模様のある。
幼虫はブナ科のクヌギ、コナラ、クリ、カシなどの葉を食べる。年1回の発生で、出現期は8-9月頃。卵の状態で越冬する。
4回の脱皮を経過して熟蚕となり、鮮やかな緑色をした繭を作る。 繭一粒から得られる糸は長さ約600〜700m、1000粒で約250〜300g程度の絹糸が採取される。
この糸は「天蚕糸」と呼ばれ、通常のカイコから得られる絹糸と比較して光沢に優れ、 伸度が大きく、織物にした場合丈夫でシワになりにくく、暖かく、手触りが良い。
その希少価値と併せて「繊維のダイヤモンド」と例えられることもある。

犀角(さいかく)
動物のサイの角のこと。漢方薬として古くから使用されていた。
現在はサイが絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)により保護されているため、 市場にはほとんど出回っていないが、密猟者も多く、角を切り取る際には一端サイを銃殺するため問題になっており、 そのため予め生息するサイの角を切り取っておくなどの措置がとられている。
鮫皮で粉末にし、1日に2〜4グラム使用すると麻疹の解熱薬として顕著な効果があるとされる。
なお、犀角の代用として水牛角や牛角が用いられることが多いが、升麻(キンポウゲ科の植物の一種)で代用できるとする説もある。

牛黄(ごおう)
牛の胆石のことを牛黄(ごおう)という。生薬で、漢方薬の薬材。解熱、鎮痙、強心などの効能がある。
救心、六神丸などの、動悸・息切れ・気付けを効能とする医薬品の主成分となっている。日本薬局方に収録されている生薬である。
牛の胆石は千頭に一頭の割合でしか発見されないため、大規模で食肉加工する設備を有する国が牛黄の主産国となっている。
オーストラリア、アメリカ、ブラジル、インドなどの国がそうである。
ただし、BSEの問題で北米産の牛黄は事実上、使用禁止となっていることと、中国需要の高まりで、牛黄の国際価格は上げ基調である。
現在では、牛を殺さずに胆汁を取り出して体外で結石を合成したり、 外科的手法で牛の胆嚢内に結石の原因菌を注入して確実に結石を生成させる、 「人工牛黄」または「培養牛黄」が安価な生薬として普及しつつある。

鼈甲(べっこう)
南方の海に生息するタイマイ(ウミガメの一種)の背と腹の甲を構成する最外層の角質からなる鱗板を10枚程度に剥がして得られる工芸品の素材である。
色は半透明で、赤みを帯びた黄色に濃褐色の斑点がある。黄色の部分が多いほど価値が高い。
現在では希少価値のほか、プラスチックとは異なる軽い質感を求めて鼈甲製品を購入する客層は多い。
なお、名前の由来を見れば分かるが、生薬、漢方でいう鼈甲は、タイマイではなくスッポンのものである。これは土鼈甲(とべっこう)ともいう。
加工し易いので工芸品や装飾品の材料として重用されてきた。
古くは正倉院にも収められているほか、職人の技術が向上した江戸時代には眼鏡のフレーム(徳川家康の眼鏡が有名)、 櫛、かんざし、帯留め、ブローチなどに加工されて普及した。
現在ではこうした装飾品の多くはプラスチック素材に変わったが、昔ながらの「鼈甲柄」を模していることが多い。
鼈甲自体の手入れに関しては汗や整髪料には弱いので、眼鏡のフレームなどは空拭きで磨く必要がある。
また、鼈甲は男性器や女性器を模した性具の材料としても利用された。

● 自然資源(生地装飾・皮革・加工品)

清水(しみず)
岩の間などから涌き出る澄んだ水のこと。

綿(わた)
繊維、または繊維状のものが絡まりあってひとまとまりの状態になっているもの。
現代日本では、通常、ワタ(アオイ科ワタ属の総称。ここでは、カタカナで書くときはこの意味で使う)から取られた木綿を意味する。
しかし、戦国時代に木綿綿が普及する以前の古代や中世では、蚕の繭から作られた絹の真綿を意味するのが普通である。
現代でも、布団や座布団の詰め物は、繊維の種類を問わず「綿(わた)」と呼ばれる。

絹(きぬ)
蚕の繭からとった天然の繊維。英語ではシルク(silk)。独特の光沢を持ち、古来より珍重されてきた。
主成分は蚕が体内で作り出すたんぱく質・フィブロイン。
蚕の繭から抽出された極細の糸を数本揃えて繰り糸の状態にしたままの絹糸を生糸(きいと)ともいう。
これに対して生糸をアルカリ性の薬品(石鹸・灰汁・曹達など)で精練してセリシンという膠質成分を取り除いて より光沢や柔軟さを富ませた絹糸を練糸(ねりいと)と呼ぶ。
また、養殖して作る家蚕絹と野性の繭を使う野蚕絹に分けられる。
1個の繭から約800〜1,200mとれるため、天然繊維の中では唯一の長繊維である。
絹の生産は紀元前3000年頃の中国で始まっていた。
伝説によれば黄帝の后・西陵氏が絹と織物の製法を築いたとされ、一説には紀元前6000年頃ともされる。
少なくても前漢の時代には蚕室での温育法や蚕卵の保管方法が確立しており、 現在の四川省では有名な「蜀錦」の生産が始められていたという。
『斉民要術』によれば現在の養蚕原理がほとんど確立していた事が判明している。
また、北宋時代には公的需要の高まりに伴って両税法が銭納から絹納へと実質切り替えられ(1000年)、 以後農村部においても生産が盛んになった。

金箔(きんぱく)
金を微量の銀や銅とともに金槌で叩いてごく薄く伸ばし、箔状態にしたもの。主に物体表面を装飾するために用いられる。
金箔のうち、もっとも利用される四号色という規格では、金 94.43 %、銀 4.9 %、銅 0.66 % を、 厚さ約 0.0001 ミリメートルに伸ばしたものである。
したがって、1 立方センチメートルの金から、約 100 平方メートルの金箔をつくることができる。
こうした大きな展性により、わずかの純金を用いて広い面積にわたって上質な輝きと光沢が得られることから、 箪笥・屏風などの家具類、襖などの建具類、漆器などの工芸品、仏像、仏壇などの美術品、 金閣寺に代表される建築物の外装・内装など、多くのものに対して装飾利用されている。
また、金箔を漆器などに用いるための工芸技術として、沈金、蒔絵が発達した。
また、料理を彩るための用途で、食用金箔も製造されている。食用とは言っても成分に違いはない。
具体的な用途としては、金箔入りの酒などの飲み物、和菓子・洋菓子のデコレーション、 金箔包みの寿司、汁物や麺類などの「あしらい」などがある。
いずれも、輝きをアクセントに用いたり、豪華さをもたせることを意図したものである。
また、科学的根拠はないものの、「金は体に良い」という迷信から利用されることもある。

銀箔(ぎんぱく)
金箔と同じように、銀を箔状態にしたもの。主に物体表面を装飾するために用いられる。今でも工芸品などに用いられる。
金閣と通称される鹿苑寺舎利殿には金箔が貼り付けられているのに対し、 銀閣と通称される慈照寺観音殿には銀箔は使用されていないのは有名な話であるが、 銀閣には全体に黒漆が塗られていたと考えられている。

膠(にかわ)
ゼラチンのことで、動物の皮膚や骨、腱などの結合組織の主成分であるコラーゲンに熱を加え、抽出したもの。タンパク質を主成分とする。
ゲル化剤としてゼリーなどの食品に用いられるほか、工業製品にも利用されている。
化学的には、コラーゲン分子の三重螺旋構造が熱変性によってほどけたものを主成分とする混合物である。
日本では、主に食品や医薬品などに使われる純度の高いものをゼラチン、 日本画の画材および工芸品などの接着剤として利用する精製度の低いものを膠(ニカワ)と称している。
接着剤である膠として5000年以上前の古代から利用されていたと考えられている。
シュメール時代にも使用されていたとも言われており、古代エジプトの壁画には膠の製造過程が描かれ、 ツタンカーメンの墓からは膠を使った家具や宝石箱も出土している。
中国では、西暦300年頃の魏の時代にススと膠液を練った「膠墨」が作られたとされ、 また6世紀頃には現代とほとんど変わらない膠製造の記録も見られる。

なめし皮
なめした皮のこと。動物の皮は、一般にそのままだと固くなったり腐敗してしまったりする。
これらを防ぎ、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を加え、皮革として利用するために必要な作業がなめしである。
なめしの工程では、腐敗しやすい動物の脂やたんぱく質を除き、コラーゲン繊維を残す。
また、柔らかくするために主に合成の脂(リンスと同じ)を再度入れる(加脂)。
なめしには、元来植物由来のタンニンなどが用いられてきたが、現在では化学薬品で処理されることが多い。
主にはクロムなめし剤(塩基性硫酸クロム)が使用されるが、その作用機序は皮の蛋白質とクロムの錯体を作って、 耐熱性等の性能が向上し、革となる。
さらに、タンニンなめし剤とクロムなめし剤などの金属化合物を組み合わせたコンビネーションなめしという方法も用いられてきている。
タンニンなめしの特徴として、切り口(コバ)が茶褐色、型崩れし難く丈夫、染色し易い(染料の吸収がよい)、 吸湿性に富む、使い込む程艶や馴染みがでる、などがある。
反面、タンニンでなめす場合、タンニンを革の中心部分に浸透させるために、 タンニン濃度を徐々に上げる必要があるため(濃度が高いと表面にだけタンニンが結合し、 後で浸透しなくなる)工程数が多くなり、30以上の工程を踏まえる必要があるため高コストになるという点がある。
よく皮革製品で「飴色になる」と表現されることがあるが、それはこのタンニンなめしの革製品の艶と馴染みによるものである。
クロムなめしの特徴としては、切り口(コバ)が青白色、伸縮性が良い、柔軟でソフト感がある、比較的熱に強い(タンニンなめしに比べて)、 吸水性が少なく水をはじき易い、耐久力がある、工程の省力化からコストを抑えられる(タンニンなめしに比べて)、などがある。
反面なめし工程上で使うクロムが化学反応を起こし、人体に有害と言われる6価クロムが含まれる。
比較的安価なクロムなめしが主流だったが、現在は昨今の環境問題からタンニンなめしが見直されている。

漆(うるし)
ウルシ科のウルシノキ(漆の木)やブラックツリーから採取した樹液を加工した、 ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料である。
最も一般的な用途は塗料として用いることである。漆を塗られた道具を漆器という。
黒く輝く漆塗りは伝統工芸としてその美しさと強靱さを評価され、食器や高級家具、楽器などに用いられる。
漆は熱や湿気、酸、アルカリにも強いが、紫外線を受けると劣化することが知られている。
極度の乾燥状態に長期間曝すと、ひび割れたり、剥れたり、崩れたりする。腐敗防止、防虫の効果もあるため、食器や家具に適している。
黒漆と赤漆を用いて塗り分けることも行われる。 昭和以後は酸化チタン系顔料(レーキ顔料)の登場により、赤と黒以外の色もかなり自由に出せるようになった。
漆を用いた日本の工芸品では京漆器がよく知られており、漆塗りの食器では、輪島塗などが有名。
竹細工の駕籠を漆で塗り固めるもの(籃胎)や、厚く塗り重ねた漆に彫刻を施す工芸品(彫漆)もある。
碁盤の目も、伝統的な品では黒漆を用いて太刀目盛りという手法で書かれる。
あらみには、樹皮やごみなどが混ざっているので、まず少し加熱して流動性を上げてから濾過をする。
現在は、綿を加えた上で、遠心分離器で分離する方法も使われている。濾過が終わったものは生漆(きうるし)と呼ぶ。
生漆に鉄分を加えると、ウルシオールなどとの化学反応で、黒い色を出す事ができ、黒漆(くろうるし)となるが、 鉄分を加えないと色の薄い透漆(すきうるし)となる。
生漆は、加熱しながらかき混ぜて、水分を蒸発させる。 練って滑らかにすることを「なやし」、水分を飛ばして濃度を上げることを「くろめ」という。
精製が終わった透漆には、必要に応じて朱色(辰砂)などの顔料を加えて色を付けて使用する。

黒炭(こくたん、くろずみ)
木材を土窯を使い炭化させた炭である。主成分は、ほぼ炭素であり、ごく少量アルカリ塩を含んでいる。
黒炭は主にナラ、カシ、クヌギなどを炭化させた物を言う。
黒炭は、専用の土窯で、木材を熱分解し、密閉して消火して作る木炭である。
白炭と黒炭の違いは密度や、精錬法などにあり、白炭は精錬時、内部温度が1000度ほどになるのに比べ、 黒炭は精錬時で400〜700度とされている。
又、消火方法にも違いがあり、白炭は窯の外で素灰を掛けて消火するが、黒炭の場合焚き口から蓋をし、 煙突も蓋をして消し壺のように消火する。
黒炭は白炭に比べ柔らかく、着火剤やバーナーで火を付けることが出来る。
黒炭は高温短時間で燃焼するため、網焼の他、火鉢や囲炉裏でも使われる。

白炭(はくたん、しろずみ)
木材を石窯を使い炭化させた炭である。主成分は、ほぼ炭素であり、ごく少量アルカリ塩を含んでいる。
白炭は主にウバメカシ、アオガシ、ナラなどを炭化させる木炭である。
白炭は、専用の石窯で、木材を熱分解し、炭化がほぼ終了した頃に窯を開け、赤熱した炭を取り出し素灰を掛けて消火して作る。
白炭はとても硬質で、断面には特有の光沢が見られる。
硬質な白炭は赤外線が多く発生し、長時間燃えるが、その反面火付けが難しく、黒炭と併用するのが一般的である。
都市ガスが無い時代は、備長炭の着火が難しいため、薪等に火を点けて黒炭に着火することを経て備長炭に火を点けたが、 現在はガスで火起しという道具で着火するので黒炭との併用は一般的ではない。

灰汁(あく)
植物の灰を水に溶かして上澄みをすくった液のこと。
炭酸カリウムが主成分であるためアルカリ性で、洗剤、漂白剤、また食品の灰汁抜きなどとして用いる。
植物性の食材である生物としての植物は、多くの場合草食動物の摂食を防ぐための防御物質として刺激性の物質や、 栄養素の消化吸収を阻害する物質、摂食した動物の生理状態を変化させる生理活性物質などを持っていることが多い。
こうした物質は人間の味覚や健康にとって好ましいと判断されれば香辛料やハーブ、 生薬として却って積極的な利用の対象となるが、食材の味覚を妨げると判断されれば灰汁として調理時に除去の対象となる。

● 食品

饅頭(まんとう)
中国の小麦粉を使った伝統的な食品である。日本の饅頭のルーツになったといわれる。
小麦粉に酵母を加えて発酵させた後、蒸して作られた一種の蒸しパンである。
なかに餡や具が入ると包子(パオズ)と呼ばれる。日本では一般に中華まんと呼ばれるものである。
一般に円形状で、直径は4cmから15cmとまちまちである。中国の北部では伝統的に麺類或いはマントウが主食として食べられる。
香港のレストランなどで出されるマントウは、中国北部のものより小さく、主食ではなく軽食(点心)として食べられる。
過去には中に具が入っていても、入っていなくてもマントウと呼ばれた。
北宋時代、包子という言葉が現れ、マントウは具の入っていないもの、 包子は具の入っているものとして区別されるようになった。
しかし現在でも、上海などの方言の中では、具が入っていても、入っていなくても、マントウと称する。
饅頭(まんとう)は伝承によれば、3世紀の中国三国時代の蜀の宰相・諸葛亮が南征の帰途、 川の氾濫を沈めるために川の神へと人柱を立てて、人の首を川に沈めるという風習を改めさせようと 小麦粉で練った皮に肉を詰めそれを人間の頭に見立てて川に投げ込んだところ川の氾濫が静まった故事から この料理が始まったという説がある。
ただしこの説は北宋時代に書かれた『事物紀原』の創作を起源とし、 のちの明時代に書かれた『三国志演義』(フィクション)で多く知られるようになり一般に流布し、このように解説されることが多い。
ちなみに中華思想から見た場合、南の部族を南蛮と呼び南蛮人の頭であることから「蛮頭」が最初の名前であったとされ、 発音は同じ“マントウ”である。
その後、饅頭は川に投げ入れるのももったいないので祭壇で祭った後、 食べられる様になったため、饅頭は当初は頭の形を模して大きかったものが、 段々小さくなっていったと言われている。一方、「神を欺き、本物の頭だと信じ込ませる」ことから 「瞞頭」と最初で呼ばれる説もある。

春巻き(はるまき)
中国料理の一つ。 中華料理の点心で、豚肉、タケノコ、シイタケなどを千切りにして炒めて醤油などで調味したものを、 小麦粉で作った皮で棒状に包み、食用油で揚げたもの。
浙江省など、華中、華北では小豆餡を包んだ甘いものが多い。

月餅(げっぺい)
中華饅頭の一種。月に見立てた丸く、平たい形は共通であるが、中国各地で大きさ、材料、中に詰める餡などには違いがあり、 またそのいわれについても諸説がある。
最も有名な物は「広式」と呼ばれる広東省広州のスタイルで、柔らかめの餡や皮を用い、 茹でたアヒルの鹹蛋の黄身を入れたものに人気がある。
小豆餡の他、ハスの実の餡やナツメ餡なども一般的である。
一方、北京など、北方の物は、一般的に水分が少なめの餡を使い、 クルミや松の実などのナッツを入れたものが多い。
水分が少ない分、保存性は比較的高い。香港ではアイス月餅など、新しく作られたバリエーションが豊富である。
一般的に、砂糖を多く含む他、ラードなどの油脂分も含むため、見た目以上にカロリーが高い菓子である。
旧暦の 8月15日の中秋節の時、家族や親しい友人が集まり、月を愛でてこの菓子を食べる風習がある。
現在は、中秋節が近づく頃、親しい人やお世話になっている人にこれを贈ることが盛んである。
数多く贈る手間を省いたり、新しいものを入手できるように、特定の店で使える月餅専用の商品券で贈る場合もある。
数を多く贈ると、結構な出費となるので、香港では、毎月積み立てをして商品券を受け取れる様にする制度もあった。
現在は金箔を貼ったり、素材に凝った豪華な物が出てきている他、箱に時計や洋酒といった高価な商品を詰め合わせて売る商法もあり、 贈賄問題となる例もある。
そのため、中国政府は 2005年以後、月餅の包装や詰め合わせものの価値が、 月餅そのもののコストの20%を超えてはならないという法律を制定した。

芝麻球
芝麻球(日本語発音:ちーまーちゅう、ちーまーかお)。胡麻団子(ごまだんご)のこと。
中華料理の甜点心(甘い点心)、菓子の一種。
日本では(揚げ)胡麻団子、ゴマタマとも呼ばれる。
中国語では麻球(マーチュウ)、芝麻棗(チーマーザァオ)などの別名もある。
胡麻餡を白玉粉に水と胡麻油を混ぜた生地で包み、まわりに白胡麻または黒胡麻をまぶし揚げて作る。
胡麻餡の代わりに小豆の漉し餡を使ったり、蓮の実餡を使うなどのバリエーションもある。
また、中に餡を入れず、暖まった空気で中空に膨らませ、大きく揚げるものもある。

小籠包(しょうろんぽう)
中国本土、台湾、香港など中華圏全域と、世界中の中華料理レストランで食べられている中華料理。
ひき肉の具を薄い小麦粉の皮で包んで蒸籠蒸しした点心。特徴として皮の中に具と共に熱いスープが包まれている。
上海の西北にある町、南翔で発祥したといわれている。「南翔小籠包」、「南翔饅頭」、「小籠湯包」あるいは「小籠包子」とも呼ばる。
竹冠のない「龍(りゅう)」を用いた「小龍包」、文字を入れ替えた「小包籠」は誤記。
一説によれば小籠包の起源は1871年に中国の嘉定県南翔鎮(現・上海市嘉定区南翔鎮)の菓子屋「古猗園」の 店主・黄明賢が売り出した「南翔大肉饅頭」にあるといわれている。
南翔大肉饅頭は好評を博したため同業者からすぐに真似された。
その後工夫を凝らし具を大きく皮を薄くし、簡単に真似ができないよう技術的な改良を 加えた「古猗園南翔小籠」を販売し、たちまち有名な饅頭としてもてはやされた。
当初より現在まで「南翔小籠包」と呼ばれ、これが今日の「小籠包」という名称となっている。
「古猗園」店主・黄明賢の弟子である呉翔升が1900年に開店した老舗「長興樓」(のちに「南翔饅頭店」に改名)が 1920年ごろに売り出したところ、上海で人気を呼び、現在は上海の名物点心となっている。
この説は南翔饅頭店の観光案内などに使用されるもので、歴史的資料に基づかない同店舗の宣伝の可能性がある。

桃饅頭(ももまんじゅう)
中国において桃は仙木・仙果(神仙に力を与える樹木・果実の意)と呼ばれ、 邪気を祓い不老長寿を与える植物として親しまれている。
桃で作られた弓矢を射ることは悪鬼除けの、桃の枝を畑に挿すことは虫除けのまじないとなる。
桃の実は長寿を示す吉祥図案であり、 祝い事の際には桃の実をかたどった練り餡入りの饅頭菓子・壽桃(ショウタオ)を食べる習慣がある。
壽桃は日本でも桃饅頭(ももまんじゅう)の名で知られており、中華料理店で食べることができる。

杏仁豆腐(あんにんどうふ)
杏仁豆腐(あんにんどうふ、きょうにんどうふ、シンレンドウフ)とは中国発祥のデザートである。
「きょうにん」という呼び名がやがて「あんにん」(唐音)にすり替わっていき、 現在では「あんにんどうふ」の呼び方が最も一般的である。
本来は薬膳料理である。すなわち、喘息・乾性咳嗽の治療薬であるアンズ類の種(杏仁(きょうにん)、 中国語では「シンレン」)の中の「仁(じん)」を粉末にしたもの(杏仁霜)を その苦味を消すために甘くして服用しやすくした料理なのである。
しかし日本では完全な嗜好品であるため、杏仁を使っていないものが多い。
また、杏仁には薬品用の苦みの強い苦杏仁と食品用の苦みの弱い甜杏仁があり、杏仁豆腐に使用されるのは後者である。

青椒肉絲(ちんじゃおろーす)
中華料理のひとつ。ピーマンと豚肉の細切り炒め。
「青椒」とはピーマン、「絲」は細切りのこと。 つまり青椒肉絲とは、ピーマンと豚肉の細切りを胡麻油などで炒めた料理をいう。
漢民族にとっては、単に肉と言えば豚肉のことであり、 日本で良くある細切り牛肉を使ったものは正しくは「青椒牛肉絲」(チンジャオニウロースー)と呼ぶ。
広東風のものは、オイスターソース(牡蠣油)、酒(紹興酒など)、砂糖などを使って甘辛く調味し、 四川風のものは唐辛子味噌と醤油などを使って辛く仕上げる。

乾焼蝦仁(がんしゃおしゃーれん)
四川料理(狭義には中国四川省の郷土料理)の1つ。
日本で言うエビのチリソース、いわゆる"エビチリ"は、中華(四川)料理人の陳建民が日本で中華料理店を営むにあたり、 四川料理の"乾焼蝦仁(ガンシャオシャーレン)"に着想を得て創作したといわれているが、異論もある。
乾焼蝦仁は海老を薬味と豆板醤で炒めたもので、四川料理らしく少々辛味が強い。
これに対し、エビのチリソース炒めは、乾焼蝦仁にケチャップを加えることによって辛さを抑えている。
陳がアレンジした当時は日本人が豆板醤の辛味に慣れていなかったこと、豆板醤が入手困難だったことなどから、 豆板醤に代わりケチャップを用い、また調理法そのものも簡易化し、現在のエビチリが形作られた。
ケチャップの利用により、家庭でも作ることが容易になり、辛さが抑えられたこともあって、大衆に受け入れられ、 中華料理ブームに乗った食品会社の宣伝も手伝って爆発的に普及した。現在では代表的な中華料理の一つとして広く知られている。

麻婆豆腐(まーぼーどうふ)
中華料理(四川料理)の一つで、ひき肉と赤唐辛子・花椒(山椒の同属異種)・豆板醤(豆瓣醤)などを炒め、 鶏がらスープを入れ豆腐を煮た料理で、唐辛子の辛さである「辣味」(ラーウェイ)と花椒の痺れるような 辛さである「麻味」(マーウェイ)を特徴とする。
なお日本では辛みを抑える為か、花椒を抜く事がある。
また抜かれていなくても本場の舌の痺れるほどの量をいれている店はほとんど存在しない。
本場四川省では、花椒は粒で入れるほか、仕上げにも粉にしたものを振りかける。
少々ではなく大量に掛けるので表面が黒くなるほどである。
「麻」(山椒の痺れるような辛味)、「辣」(唐辛子の辛味)、そのどちらが不足しても本場の麻婆豆腐にはならない。
清の同治帝の治世に、成都で陳森富の妻劉氏が材料の乏しい中、有り合せの材料で来客(労働者)向けに作ったのが最初とされる。
「麻婆」とはあばたのおかみさんの意で、劉氏があばた面だったことに由来する。
中国大陸では文化大革命以降「麻辣豆腐」と称することもあるが、「麻婆豆腐」と称する方が一般的である。

炒飯(ちゃーはん)
白飯を様々な具と共に油で炒めた料理。英語ではFried riceと言う。
庶民的・大衆的な中華料理店では欠かす事のできない定番メニューで、メインメニューとしてもサイドメニューとしても需要がある。
単品のチャーハンは、庶民的な飲食店では搾菜(ザーサイ)や紅しょうが、スープがセットになっていることが多い。
半分のチャーハンは「半チャン」(はん-)と呼ばれ、半チャンラーメン、半チャン餃子という名のセットメニューは定番となっている。
チャーハンとラーメンを単品として同時に注文した場合、チャーハンのスープが省略されることも多い。
昨今はチャーハンに中華スープをかけて食べるスープチャーハンも、本格的な中華料理店を中心に人気がある。
日本にも深く浸透しており、また類似の料理は東アジアと東南アジアで広く見受けられ、 例を挙げれば朝鮮半島ではポックムパプ、タイ王国ではカーオパッ、 インドネシアとマレーシアではナシゴレンとして定着している。
中国語の音表記はチャオファンに近い。
次のように呼ぶ日本の地域もある:焼飯(やきめし)、炒飯(いためし)、炒めご飯(いためごはん)。

回鍋肉(ほいこーろー)
中国料理・四川料理のひとつ。
回鍋とは、鍋を回転させることではなく、一度調理したものを再び鍋に戻して調理することである。
本来の回鍋肉はキャベツではなく蒜苗(ソンミョウ、葉ニンニク、ニンニクの芽)を使う。
肉も皮付きの豚肉の塊を茹でるか蒸してから使う。
陳建民が回鍋肉を日本に広めた際に蒜苗がキャベツに取って代わられ、肉も最初から薄切り豚肉を使うようにアレンジされ、 それが日本で標準となった。
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